Sei KIsaragiオフィシャルブログ


戦争はなぜに?(フロイトの論文から抜粋)��

2013.09.20 Friday[フロイト]-

成員たちの感情の絆という拘束によって結束が保たれる一つのより大きな統一体に権力を委譲することによって、暴力は克服されるのだ、ということです。これ以外のことはすべて、その敷衍と反復にすぎません。共同体が、強さの点で互いに等しい何人かの個人から成るかぎり、事態は簡単です。そこでは、安全な共同生活が可能となるためには、個々の者が、自らの力を暴力として用いる個人的な自由をどの程度まで断念しなければならないかを、この結束した一団の法律が規定します。

しかし、このような平静な状態はただ理論的について不均一な要素を含み、そこへもってきて後にまた戦争と征服の結果として勝者と敗者が生まれ、さらにそれが主人と奴隷に転じるなどして、事態は複雑になります。そうしますと、共同体の法は、その只中にある不平等な権力関係の表現となり、法律は支配する者たちによって、また支配する者たちのために制圧され、服従者たちにはほとんど何の権利も認めなくなるでしょう。

この時より共同体の中には、法を動揺させると同時にまた法をさらに形成してゆく二つの源泉が存在することになります。第一に、支配者たちのうちの何人かは、万人に妥当する制約を乗り越えようとする、要するに法の支配から暴力の支配へ立ち返ろうとします。第二に、虐げられている者らは、今以上の権力を得ようとして、この変更を法律の中に明文化させようとする、要するに、先とは逆に不平等な法から万人にとって平等な法へと突き進もうと絶えず奮闘するのです。

様々の歴史的な契機の結果として権力関係に遷移が生じることがありますが、共同体の内部で実際にそういった遷移が起こる時、右の二つの流れか、あるいは、もっとよくあるのは、支配階級がこの変化に対応する準備ができておらず、暴動や内乱の発生に立ち至る、つまり、一時的に停止され、暴力による新たな力比べが起こり、それが終息すると、新たな法秩序が設立されることになります。なお法が変化するのに、もう一つ平和的な仕方でのみ現れる源泉があります。

それは、共同体の成員が文化的に変わることですが、これはもっと後でないと検討できない文脈に属する問題です見てのとおり要するに、従来、一つの共同体の内部においてでさえ、利害の衝突を暴力的に処置するのは避けられませんでした。しかし、同じ土地で共同生活を送ることから来る様々の必要や共通点は、闘争の速やかな終結を促します。このような条件のもとでなら、ことが平和裡に解決する確率は次第に増大しつつあります。しかし、人類史を眺めれば、そこに現れてくるのは絶えざる抗争の連鎖であります。

一つの共同体と別のまた一つの、あるいは複数の共同体との間に、大小の統一体の間に、すなわち、市街区域間、地域間、部族間、民族間、帝国間に起こるこれらの抗争は、ほとんど常に戦争という力比べによって片が付けられます。
このような戦争は結局、一方の側に対する略奪か完全なる制圧、ないし征服こ終わります。征服戦争を一律に評価することはできません。

モンゴル人やトルコ人の戦争のように征服戦争の中には災厄しかもたらさなかったものもありますが、逆に戦争のおかげで従来よりも大きな統一体が生まれ、この中ではもはや暴力を行使するという方策は取られなくなり、新たな法秩序が抗争を調停することによって暴力を法へと転換させることに貢献した戦争もありました。例えばローマ人による征服は、地中海諸国に貴重な(ローマ平和)をもたらしました。フランスの歴代の王たちが抱いた領土拡大の野望は、平和的に統一された、繁栄するフランスを創り出しました。

いかにも逆説的に響きますが、戦争は、強大な中央権力によって内部でのそれ以上の戦争が不可能となるよう強大な統一体を創り出すことができるがゆえに、人々の待望する(永遠の)平和を打ち立てるための手段として不適格ではないというのは認めなければなりません。とはゆえ、戦争はやはり平和樹立の役には立ちません。
征服の成果は、必ずや長続きしないからです。新たに創られた統一体は再び瓦解してゆきます。大概は、暴力的に統一された各部分を結束させることができなかったからです。

加えて、征服が従来、創り出した統一体は、なるほどその規範が広がったとはゆえ、所詮、部分的な統一体でしかなく、それらの間の抗争はこれまでにもまして暴力的な決着を招き寄せることになったのです。そういった好戦的な尽力を積み重ねてきた結果、人類は、数が多いばかりか絶え間のなかった小規模な戦争の代わりに、稀ではあるがそれだけ大きな荒廃を生む大規模な戦争にしたに過ぎないというわけです。

続く。


如月eye
フロイトの鑑識眼も伺わせる内容ともいえる、歴史や哲学のにも豊富な知識を鑑みて因果関係や自らの精神分析を照らし合わせて述べています。


130908_121333.jpg